2011年ブラジルディスク大賞山ブラ編③は、番外編。その①、その②で紹介できなかったディスク、選に漏れたけどこれは良いぞというディスクです。
ANTONIO LOUREIRO / Antonio Loureiro

これはホント素晴らしいアルバムなんですけどね、残念ながら2010年度の対象作ということで、選出できなかったんです。高橋健太郎さんがミュージック・マガジンの「ベスト・アルバム2010」で取り上げていた、SSWでマルチ・インストゥルメンタリスト。創りだす楽曲の複雑にして妙なること、多くの楽器を駆使した編曲の立体感と色彩感、そしてBrasilidadeも横溢しているという、圧倒的な音楽。ブラジルディスク大賞の対象としてはとても不運なアルバムですね。残念!
CARLINHOS BROWN / Diminuto

これも実に素晴らしいアルバムで、絶対選出しようと思っていた記憶はあるのですが、なぜか全く思い出さなかったという、残念な作品。Dreamyなsambaから始まる本作、其処にCarlinhosのpercussionが絡むところがとてもスリリング。Carlinhosのpopな部分、メロディーを作る才能が遺憾なく発揮されています。Carlinhosの中のソフトな魅力が表現された素敵な1枚。何で忘れたのかな?
DOMENICO / Cine Privê

Domenicoの本作も勿論素晴らしかったのだけど、 Adrianaのsupportは素晴らし過ぎて、そっちに私の気が行っちゃったんだよね。さて本作、尖った部分は以前より落ち着いて、かといって新鮮な試みを忘れていない。新世代、2世世代という足枷はもう、勿論不要。Composer, Sound Creater, Performerとして、独自の音楽性がカッコいいのだ。
PATRICIA MARX & BRUNO E. / Patricia Marx & Bruno E.

忘れていたディスクとは違って、これはギリギリで落選。どちらかと言えばclub musicや、electronicaのイメージの2人なのだが、本作はそれを覆すアコースティック中心の作品。でもそれが滅茶苦茶にカッコいいのである。Brasilidadeをしっかり感じさせながら、彼等ならではのクールで洗練された部分が生かされている。なんで選外なのかはその時の気分で決まった。
LEO MINAX / Sem Tirar Nem Pôr

これもとても悩んだんですよ。ギリギリまでベスト10でした。ただ今回の選は、面白いものというのが私の勝手なキーワードでしたので、最後に選外にしちゃった。ちょっと悔いも残ります。Leoの音楽は、Suso Saizとのco-laborateによる、”Aulanalua”や”Da Boca Pra Fora”等に代表されるように、空間的な陰影を感じさせる、練り上げられ洗練されたサウンドが特徴的だ。しかし本作は全くのVoz e Violãoによる作品で、かつ一発録りなのだ。このスタイルは、すなわち彼の日本ツアーでのスタイルそのもの。シンプルであるが故に改めてLeoの作る曲の繊細な美しさ、切ない歌声、ギターの独特の表現が浮かび上がってくる、素晴らしいアルバムになった。
こうして見ると番外編もかなり魅力的である。この他にも「CHORO CLUB WITH VOCALISTAS / Takemitsu Songbook」、「NAOMI & GORO & NARUYOSHI KIKUCHI / Calendula」、「KAZUMA FUJIMOTO / Sun Dance」など日本の作品も素晴らしかった。来年も楽しみです!
昨日に引き続き、2011年ブラジルディスク大賞 山ブラ編②
第5位:DELIA FISCHER / Saudações Egberto

昨年の“Presente”に続くDelia Fischerの3枚目のアルバム。今回は彼女が敬愛し、師匠とも言えるEgberto Gismonti集。もちろん期待を裏切ることなどあろうはずが無い。”O Sonho”, “Loro”, “Saudações”, “Frevo”, Agua e Vinho”など、Gismontiの名曲の数々が、Delia Fischerのpianoとvocal、そして彼女のgroupの端正なバッキングによって演奏されている。彼女はもちろん素晴らしいピアニストであ る。しかし歌にも独特の儚い魅力があって、その歌とピアノでこの大音楽家の音楽に好ましい軽やかさを与えている。御大本人が10弦ギターで1曲に参加、ま たMoskaもゲストで軽やかな歌を添えている。
第4位:MARCELO CAMELO / Toque Dela

Marcelo Cameloのソロ2作目。最初に言っときますが、私Marcelo Cameloの大大大ファンでありまして、冷静な判断は大凡出来かねます。磨き抜かれた切ないメロディー・ライン、余韻を残す甘い歌声を聴いただけで、も うこれはすでに今年のベスト(キッパリ)。シンプルでタイトなサウンドはLos Hermanosの延長線上のそれですが、よりきっちりアレンジされていて気持ちがよい。期待を裏切らない素晴らしい出来。
第3位:TATIANA PARRA & ANDRÉS BEEUWSAERT / Aqui

これは参った。予想はしてたけれど。予想以上に参った。São Pauloの歌姫Tatiana Parraと、Aca Seca Trioのpianist、Andres Beeuwsaertとのduo。Tatianaのデビュー盤、そしてAndresの“D’os Rios”での共演が、こうして二人の作品として結実したのだ。この二人、美意識が極めて近い。故にかくも親密で透明な世界を構築し得たのだろう。「美し い」という言葉で表現したのでは、凄く陳腐に感じてしまう。それほどに珠玉の作品です。
第2位:TELEBOSSA / Telebossa

Berlinを中心に活動するブラジル人Chico Melloと、Berlin出身のドイツ人Nicholas Bussmannとのユニット、”Telebossa”のアルバム。実験的でいてまた無類に美しい音を追求するChicoと、チェロ奏者であり、エレクト ロニカにも通じるNicholasの組み合わせは、お互いの求めるところであった様だ。ミニマルな弦のアンサンブルと、Chico の繊細な歌声、極めて控えめな打楽器とエレクトロニカによって、知的でいて感覚的な世界を創り上げている。実験的でありながら全く難解さを感じさせないの は、二人の美意識の故であろう。
第1位:ADRIANA CALCANHOTTO / O Microbio Do Samba

AdrianaがSambaに挑戦、ということで話題となったアルバム。もちろんAdrianaだけに、普通のSambaなどということはあり得な い。Adriana流の極めて進化したSambaなのだ。基本的にAdrianaと、Alberto Continentino (baixo)、Domenico Lancellotti (perc.)の3人の演奏を主体として、Davi Moraes, Rodrigo Amarante, Moreno Velosoなどが花を添えるシンプルな構成。クールな色彩に統一された彼女のSambaは、勿論Sambaのリズムを基調としていても、紛れもない Adrianaならではの音楽なのだ。
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ということで2011年度山ブラ的ブラジルディスクベストテンでした。
さらに③(番外編に続く)
今年もやります。2011年度ブラディスク大賞、山ブラ編。ラティーナ誌2012年1月号に掲載された会長選出ディスクをあらためて。
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第10位:JAMBRA / Folha De Laranjeira

Guilherme Bandeira (vo), Danilo Silva (violao), Fabio Faustino (bateria)3人による、全員が19-21歳という若造達によるユニット、”Jambra”。都会的で洗練された音楽性はただ者ではない。Thiago Espirito Santoがproduceとbassで全面的にバックアップ。まあ言っちゃえばオーセンティックなBrasilian Grooveなのだけれど、Mellowで、groovyで、若々しくて、勢いがあって、これは素晴らしい。 Thiagoのバックアップが凄い。目立っちゃってます。目立ち過ぎです。
第9位:ALEXANDRE ANDRÉS / Agualuz

何だこの若造。正直驚くしかないぞ。このqualityの高さは一体なんなのだろう。曲はすべてAlexandre Andrésの作曲と、Bernardo Maranhãoの詩によるもの。複雑で壮大な楽曲はちょっと、比べるべき者が居ない。ジャケをみると、このBernardo君も若造みたい。素晴らしいコンビである。重層的で色彩感溢れるアレンジメントと、超高品質の演奏は驚くべきもの。立派でも魅力的ではないって言う場合もあるけれど、これは極めて魅力的。その上Andre Mehmariや、Monica Salmasoも参加しているなんて、やはり驚くしか無い。
第8位:ROMULO FRÓES / Um Labirinto Em Cada Pé

Romulo FroesはSao PauloのSSW。以前から私的には注目して来たアーティストで、本作は彼の4作目。ちょっと3枚目には入り込めなかったのだが、本作はもうこれは素晴らしい。基本路線は変わっていない。Sao Pauloのお婆ちゃん歌手Dona Inahの歌で始まる本作も、sambaをベースにはしているが、翳りのある曲想、斬新な音作りは如何にも彼らしい。独特の感性とサウンドで、彼だけのどこか凄みのある音に溢れている。ChorusでNina Becker、guitarでRodrigo Campos等が参加。
第7位:SEU JORGE / Musicas Para Churrasco Vol.1

「シュハスコのための音楽」と題されたSeu Jorgeのnew album。タイトル通りの如何にも肉食の音楽だけど、これはとてもとても良い。いつもながら切れ味鋭いenergishなfunkやsamba、ごった煮の風味は変わらずに、さらにmellowな曲が加わって素晴らしい出来。汗だくだけではない新機軸。これがもう出色にカッコ良いのだ。vol.1って言うからには少なくともvol.2は出るだろうって期待も待たせつつ。まあJacketだけは勘弁してね。
第6位:MARIA RITA / Elo

待望の4作目。基本的路線は1st、2ndに戻り、Thago Costa (p.)、Sylvinho Mazzucca (b.)を中心としたJazzの香りを漂わせたsound。選曲は気鋭の若手の曲をセレクトして今までとは少し違って、Lula Queiroga, Fred Martins, Davi Moraes, Daniel Jobim, Caetano Veloso, Djavan, Edu Lobo /Chico Buarque, Monarco, Maecelo Camelo, Rita Leeといった名の有るアーティスト達を取り上げているが、選曲のセンスの良さはいつも通り。歌の不安定さはますます無くなって、柔らかな肌触りの歌には力強さも漂っている。5/11曲でThiagoがRhodesを弾いていて、これがもう鳥肌もの。充実の新譜。
その②に続く。
昨日に引き続き、ブラジル音楽2010年私のベスト10を紹介し切って新年を迎えよう。
5位:NINA BECKER / Azul

Orquestra Imperialの華、Nina Beckerの満を持してのソロ・デビュー作は、なんと一度に2枚なのであった。これが頗る良いのだが、私的には静の”Azul”が大好きだった。しっとりとシンプルに、そして清新と洗練を感じさせるsoundそして、抑えた感情を柔らかくふっくらと紡ぎだすNina Beckerの歌が秀逸。素敵すぎます。
4位:TATIANA PARRA / Inteira

本作は様々な意味で注目されるべき、意味の深いアルバムだった。まずは注目のサン・パウロのNovos Compositores系の最新かつ進化した形として。そしてAndres Beewsaertのアルバムに参加していた彼女のアルバムに、Aca Seca Trioが参加したことにより、contenporary folkrole sceneとNovos Compositoresとの関係が、音楽的にも人脈的にも構築されたこと。さらにはTatiana Parraという素晴らしく個性的な歌手のデビュー・アルバムであること。注目されるべき、などと言うことよりも、音楽的に新しくなんと将来性を感じさせることか。さらにプロデュースはMarcelo Mariano、そしてCaser Camargomoも参加という、多くの要素が共鳴し合って創り上げられたアルバム。
3位:DELIA FISCHER / Presente

前作“Antonio”から10年振りの新作。煌めくDelia FischerのpianoとRhodes、シンプルで趣味の良いSebastian Notiniのパーカッションをベースに、Hemeto Pascoal, Egberto Gismonti, Ricaldo Silveira, Ana Carolinaなどがゲストとして花を添えている。哀愁を秘めたDeliaの儚いvocal、melancholicで、奥行きを感じさせる曲想、そしてジャジーで室内学的なサウンド、全てが素晴らしい。
2位:SERGIO SANTOS / Litoral e Interior

Sergio Santosは、現代のBrasil音楽界において、最も質の高い音楽を提供し続けているartistである。Minas出身であるが故か、彼独特の透明な、澄んだ色彩感と、柔らかな陽射しのような暖かさがあるのだ。そして本作はAndré Mehmaríを招いて、大胆にオーケストレーションを導入したアルバムである。聴く側としては、少々戸惑いも有ったのだが、やがてその美しさに引き込まれてしまった。クラシックやジャズも飲み込んだ、スケールの大きい、品格の漂うアルバムだ。
1位:MOSKA / Pouco

Moska久々のスタジオ録音。この長いインターバルに、自己の音楽を徹底的に見つめ直したのではないだろうか。”Pouco”と”Muito”の2作がリリースされたが、私は断然”Pouco”。これが今までのMoskaとは全く違う。もともとコスモポリタンなpop/rockを指向するMoskaなのだが、本作では彼の声とギターを中心に、Marcos Suzano, Pedro Aznar, Chico Cezar, Maria Gaduなどのminimalなサポートを得て、SSWとしてナイーブ極まりない音楽を創り上げた。Zelia Duncanとの共作をはじめ、切なく穏やかで、メランコリーな楽曲は、新境地と言えるだろう。Brasilidadeは決して濃くはないけれど、このデリケートなMoskaの新しい音楽に喝采を。
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以上不肖山ブラ会長の選んじゃった2010年のブラジル音楽10枚でした。
来年もよろしくお願いします。
ラティーナ誌の2010年ブラジル・ディスク大賞、ご覧になりましたでしょうか。全体並びに関係者投票の順位は紙面でご覧下さい。今回も関係者として選者をさせて頂きましたが、こちらで私のセレクションを少し詳しく紹介致します。今日は10-6位を。ほとんどyamablogのコメントを使っています(←手抜き)。
10位:JULIO DAIN / Apenas Humano

こういう音楽はサン・パウロ以外あり得無い。フランス在住の期間も長かったというSSW、Julio Dain。複雑で洗練されていて、少し実験的で、cosmopolitanな音楽性はその経験故か。核となるのは、落ち着き払った彼の歌声と、Pedro Sá, Marcos Suzano, Marcelo Costa, Lui Coimbraなどを迎えた感性豊かななsound creation。もうちょっと注目されるべき。
9位: GAFIEIRA SÃO PAULO / Gafieira São Paulo

ガフィエイラをサン・パウロ風味で調理した好盤。ガフィエイラがテーマだから勿論体の動く音楽なのだけれど、それ以上に洗練が光る。選曲もMoacir Santos, Chico Buarque, João Donato, Giana Viscardi, Laercio Freitusなどを新旧の楽曲取り混ぜて幅広い。実力者Verônica Ferrianiの歌のカッコよさったらもう、この上ありません。
8位:CHICO PINHEIRO / There’s A Storm Inside

Chico Pinheiroの待望の新作。ゲストにDianne ReevesとBob Mintzerというジャズ界の大御所を招いて、サン・パウロと米国で録音された。もちろんジャズ色は従来よりさらに濃いのだが、基本的なChico Pinheiroの核は全く変化していない。Chicoらしい都会的で洗練された楽曲と、ますます技巧的な進化を見せる流麗なギター・プレイ、そして格段に進歩した本人の歌による、彼ならではの洒脱な世界。Paulo Pauleli (b.), Marcelo Mariano (b.), Edu Ribeiro (dr.), Fabio Torres (p.)のサポートもtightで実にカッコ良く、そしてLuciana Alvesの歌が、極上の透明感をもたらしている。
7位:SPINETTI, DADI, CECCARELLI, PETRENI / InventaRio

Dadiと3人のイタリア人jazzmenとの共演作。この音楽にこのジャケット写真の組み合わには脱帽。もちろんDadiはベテランなのだけれど、このディスクに収められた音楽はそんなことを忘れさせるもの。封じ込められた、瑞々しく純粋で、そして粋な叙情には、世代などという言葉は全く無意味だ。Marisa Monte, Ivan Lins, Wilson Das Neves, Mauro Dinizなど、錚々たるゲストもDadiの音楽に溶け込んでいる。
6位:ROBERTA SÁ & TRIO MADEIRA BRASIL / Quando O Canto É Reza

本作は絶対皆さん上位に入れるはず、ということで私は敢えて中位にしておきました。Roberta Sáと、Trio Madeira Brasilとの共演盤と言うだけで素晴らしい企画。さらにRoque Ferreira曲集という素晴らしい企画でした。私正直に言いますと、Roberta Sáの前作、あまり好みではありませんでした。「もっと出来る子」だと思っておりました。そこに本作の登場。Trio Madeira Brasilの美しく華麗なアンサンブルに、どこまでの伸びやかなRoberta Sáの歌。そしてこの組み合わせで、Roque Ferreiraを歌うというのは、出来過ぎです。でも出来ちゃったんです。
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明日は残りの5-1位を掲載します。